『夕矢と三人の嫁(仮)』

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『夕矢と三人の嫁(仮)』

片桐夕矢 楽太郎
片桐藤実A 夕矢の妻 阿部祐子
片桐藤実B 夕矢の妻 金子綾香
片桐藤実C 夕矢の妻 後藤貴子
 ※登場順


 寝室。暗闇。
 夕矢、悲鳴とともに跳ね起き、ベッドに座る。
 遅れて眠そうに体を起こす藤実A。

藤A (ベッド近くの明かりをつける) どうしたの、大きな声を出して。
夕矢 藤実さん?
藤A ・・・うん。
夕矢  あ、いや。ちょっといやな夢を見て。
藤A 夢? どんな?
夕矢 え、どんな? え、え、なんで?
藤A 恐い夢を見たら、人に話したほうがいいって言うよ。
夕矢 え。……覚えていない。
藤A そう。
夕矢 ごめん。起こしちゃって。寝よう、明日も早いから。
藤A うん。
夕矢 おやすみ。
藤A おやすみ。(電気を消す)

 暗闇。
 二人、寝る。
 しばらくして。

夕矢 うおおおっ!
藤A なあに?(明かりをつける)
夕矢 なんでもない。なんでもない。
藤A どうしたの?
夕矢 恐い夢見て・・・。
藤A また?
夕矢 うん。
藤A どんな?
夕矢 いや、あの、覚えてない。
藤A ほんとに? 
夕矢 え、なんで疑うの? ほんと覚えてないって。
藤A 汗びっしょり。
夕矢 ほんとだよ。ほんとほんと、寝よう、ね。
藤A ・・・。
夕矢 なに?
藤A 恐い夢を見たの?
夕矢 う、うん。なに?
藤A ううん。おやすみ。(電気消す)

 暗闇。
 二人、寝る。
 しばらくして

夕矢 うおおおっ!!

 また明かりがつく。
 さっきまで藤実Aがいたところに、藤実B。

藤B (明かりをつけて起き上がる)夕矢くん?
夕矢 ごめん、ごめん。 
藤B どうした?
夕矢 いや、なんて言うか。
藤B わかった。恐い夢見た?
夕矢 うん。言わなかったっけ?
藤B いや、言ってないよ?
夕矢 言ったよ。恐い夢見て。
藤B で、どんな? どんな夢?
夕矢 覚えてない。
藤B えー。恐かったことは覚えてるのに?
夕矢 忘れちゃった。
藤B わかった。誰か死ぬ夢だ。
夕矢 え!?
藤B なに。
夕矢 いや、いきなり死ぬって言うから。恐いよ。
藤B え、死ぬ夢は悪い夢じゃないんだよ。
夕矢 でも。
藤B おばあちゃんが言ってた。
夕矢 へー。
藤B 私なんか夕矢さん死ぬ夢よく見るし。
夕矢 恐いよ!?
藤B だから、いい夢なんだって。
夕矢 いいってどういう風に?
藤B それはわかんないけど。でも、大丈夫。いい夢だから。
夕矢 ほんとに?
藤B あした早いんでしょ。
夕矢 あ、ああ。
藤B おやすみ。
夕矢 おやすみ。また明日。(電気を消す)

 暗闇。
 二人、寝る。
 しばらくして

夕矢 うおおおおっ!!

 また明かりがつく。
 さっきまで藤実Bがいたところに、藤実C。

藤C また大声出して。
夕矢 ごめん。
藤C 恐い夢でも見たの?
夕矢 いや、うん。見た、ような気がする。
藤C 覚えてないの?
夕矢 う、うん。
藤C 私・・・、夢占いできるよ。
夕矢 ほんとに?
藤C 知らなかった?
夕矢 うん。初めて聞いたと思う。
藤C なにか覚えてない?ちょっとでも。
夕矢 実は、藤実さんが死ぬ夢。
藤C え・・・。
夕矢 あれ?
藤C ・・・。
夕矢 で、でも、死ぬ夢はいい夢なんだって。
藤C ・・・。
夕矢 ごめん。
藤C (夕矢にくっつく)
夕矢 藤実さん・・・。 
藤C 私は死なないよ。大丈夫。
夕矢 うん・・・。
藤C で、どんな死に方したの?
夕矢 ん?
藤C どんな死に方したの、わたし?
夕矢 そ、そこまでは覚えてない。ごめん。
藤C そう。あした早いんだよね。
夕矢 うん。
藤C 寝よ。手をつないでてあげるから。
夕矢 うん。

 ふたり、くっついたまま横になる。電気を消す。
 暗闇。
 しばらくして、

夕矢 うおおおおおっ!

 明かりがつく。
 今度は藤実Cのとこに藤実A。

藤A (明かりをつける)ほんと、大丈夫?
夕矢 恐い夢見て。
藤A もしかして、
夕矢 なに?
藤A 他の女の人の夢?
夕矢 え、なになに? よく聞こえなかった。
藤A 夕矢さん、モテるから。
夕矢 ごめん、なに言ってるかぜんぜんわからないよ。
藤A ・・・動揺しすぎ。
夕矢 ごめん、そういうんじゃないんだ。ほんとに。兄ちゃんじゃあるまいし。
藤A ・・・。
夕矢 藤実さん。
藤A なに?
夕矢 藤実さんは、パラレルワールドって信じる?
藤A ・・・ごめん、よくわからない。
夕矢 だよね。ごめん、今度こそちゃんと寝る。
藤A ココアあるよ。寝られないんだったら、飲む?(起きようとする)
夕矢 いいよ。歯、磨いちゃったし。
藤A そう?
夕矢 ありがとう。
藤A ・・・。
夕矢 ほんとに違うからね?
藤A わかってる。

 二人あらためて横になる。
 暗闇。  

夕矢 うわわわわわっ!
藤B どうしたの?

 明かりがつく。
 藤実Aが居たベッドに藤実B。
 ベッドの傍らに、マグカップをふたつ持った藤実Aが立っていて夕矢と藤実Bを見ている。
 ストップモーションのようにも浮気現場を見て硬直しているようにも見える。

夕矢 いや、なんでもない。
藤B なんか疲れてるね。なにか飲む?
夕矢 いや、いい! ほんとに!
藤B ・・・いやなことでもあったの?
夕矢 いや、そういうんじゃないけど。
藤B 溜め込んでるみたいだから。
夕矢 ほんと大丈夫だから。
藤B もしかして・・・・・・。
夕矢 な、なに?
藤B わたし、歯軋りうるさい?
夕矢 え!?
藤B いや、こういうの自分じゃわからないから。
夕矢 そんなことないよ。
藤B ほんとに?
夕矢 歯軋りなんてしてた?
藤B 治ったと思ってたんだけど、結婚前からずっと親に言われてたから。
夕矢 初耳だよ。
藤B うん。治ってなかった?
夕矢 大丈夫。ただ、
藤B うん。
夕矢 なんだか、自分には人生が三回あるみたいだ。
藤B ん?
夕矢 いや、ごめん。なんでもない。
藤B わたし、居間で寝ようか?
夕矢 いいよ。それなら、俺が。
藤B ダメだって。夕矢くんはしっかり休まなきゃ。(ベッドから出る)
夕矢 藤実さん。
藤B トイレ。
夕矢 ほんとに?
藤B いや、疑われても。
夕矢 そ、そうだね。ごめん。

 暗転。
 明るくなる。
 藤実Aはそのまま立っている。
 その横に枕を抱えた藤実Bも立っている。
 二人とも動かず険しい顔でベッドの夕矢と藤実Cのやり取りを見ている(ように見える)。

藤C まだ眠れないの?
夕矢 う、うん。
藤C そうだ。
夕矢 なに。
藤C 中国語の勉強してみたら?
夕矢 ええ?
藤C いっつも勉強中眠たくなるって言ってたじゃない。逆転の発想よ。
夕矢 そ、そう。
藤C いい? メイ クアン シー マ?
夕矢 なんだっけ、それ。
藤C 「大丈夫ですか?」
夕矢 め、めいくあんしーま。
藤C 発音ぜんぜん違う。
夕矢 そ、そう?
藤C 「メイ クアン シー マ?」
夕矢 メイ クアン シー マ。
藤C 違うって。
夕矢 違わないよ。ちゃんと言えてるって。
藤C そうじゃなくて。「大丈夫ですか」って言われて「大丈夫ですか」って返さないでしょう。
夕矢 え?
藤C 「メイ クアン シー マ?」って聞かれたら、
夕矢 「メイ クアン シー」
藤C そう、「大丈夫」って返す。
夕矢 ええ。それ、ずるいなあ。

 藤実ABが見守る中、二人笑いあう。

藤C (あらためて夕矢の手を取って顔を見つめて)メイ クアン シー マ?
夕矢 ・・・メイ クアン シー。
藤C よかった。(夕矢にくっつく)

藤A 夕矢さん?
夕矢 ・・・えっ。(初めて藤実Aに気づく)
藤B 夕矢くん・・・。
夕矢 えっ。(藤実Bにも気づく)これは・・・。

藤A 夕矢さん、説明してくれる?
夕矢 違うんだ、これは。
藤B 違うって。なにが。
夕矢 えっ。藤実さん。藤実さん?
藤C 夕矢さん、このひとたち、なに?
夕矢 藤実さん。

藤実ABC(口々に夕矢の名前を呼ぶ)

 暗闇。

夕矢 うわわわわわわーっ。
藤ABC どうしたの?

 
終わり。

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