菊池寛『蘭学事始』(1921年)

2016/7/29
杉田玄白は、前野良沢を苦手に思っている。
同じ学者でも社交的で調整型の玄白に対して、一途で頑固すぎる良沢は居心地の悪い存在だった。
その原因を学者としての嫉妬だと自覚して玄白は苦しんでいる。
『風雲児たち』の該当箇所を読んだばかりなので、ふたりの様子がみなもと太郎先生の絵で脳内再生される。
玄白にとって、良沢のような学者の鑑を煙たがっているということは、誰にも見せたくない感情だと思う。
それをしっかり書いてしまうところが小説として面白いし、菊池寛は腹が据わっている。
菊池寛は、文学者でありながら実業家でもあった。完全に玄白タイプ。
じゃあ、良沢は誰なのかと言えば、芥川としか思えない。
菊池は芥川に対して居心地の悪さを感じていたんだろうか。
二人は親友で通っているが、否定する理由にもならない。

※青空文庫:蘭学事始
※初出は春陽堂『蘭学事始 他四篇』(1921年)と思われる。

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