菊池寛『ゼラール中尉』

2016/8/3

「嫌われゼラール中尉の一生」という感じ。
ゼラール中尉は自信家で人の話を聞かない。
ベルギー、リエージュの町にドイツが攻めてくると予言して、実際にドイツが攻めてくると喜んでしまう。
大変な事態なのに予想をはずした人に自慢しようとする。
いい人でもなく、共感もできない人が、たまに正しいことを言う。
同様に共感できるいい人の判断が、完全に間違えている。
そういうことは実際の世の中でもわりと良くある。人生の真実と言ってもいい。
菊池寛は、こういう善悪の評価が難しい人たちを書くのがうまい。
大尉のカッコ書き部分など、荒っぽい描写もあるけど、構成がしっかりしているので押し切られてしまう。
いかにも善悪のものさしをあてたくなるように書いてあるのに、実際にあててみると長いのか短いのかが、よくわからなくなる。
そういう錯視感覚が楽しい作品。

青空文庫:ゼラール中尉

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