菊池寛『出世』

2016/10/11
譲吉がかつて通っていた図書館で、愛想の悪かった下足番と再会する話。
まず、翻訳で小遣いを稼ぐ話、本を列車に置き忘れた話、図書館の下足番が無愛想だった話が語られる。
その後、比較的生活が安定してきた頃に、あらためてその図書館に行くと、下足番がちょっと出世している。
どんなに不遇な境遇でも、出世することはあると思うと、人生に望みが出るというまとめ。
下足番から閲覧券売り場へのわずかな出世でも、それが希望になりうるということは、誰でも希望を持つことが出来るということ。
ちょっと道徳的過ぎるけど、二人いた下足番のもう一人の姿が消えているところに若干不穏さが残っている。
小説の体裁はとっているので、下足番を二人にしたのは意図的なはず。
「希望を語れるのは生き残った人だけ」という皮肉もちょっと感じる。

青空文庫:出世

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